CONTACT
お問い合わせ・ご相談予約はメールでも、お電話でも受け付けております。
お気軽にご相談ください。
気候は一年をとおして気温差が少なく夏も涼しく快適ですが、住宅事情はそうではないようです。現地ガイドの話によれば、市内で家を借りようとすれば家賃は30万~40万円程度は下らないとのことで、多くの人が北対岸や東対岸などの郊外から市内に通勤しています。そのため、通勤時間帯のゴールデン・ゲート・ブリッジやベイブリッジは大渋滞。金融やIT関係者は3時間の時差があるニューヨークを中心に動くことから朝6時前には激しい渋滞になり、通勤だけでも一苦労のように感じます。もっとも、家賃の多寡はありますが、東京23区など日本でも住宅・通勤事情は同じようなものかもしれません。東京都内へ向かう通勤電車のあのすさまじい混雑具合には海外の人も驚くでしょう。
ベイエリア付近の高級住宅街では、1軒家の住宅価格は最低でも5億円程度の値がついており、中には100億円以上するような住宅もあるとのことです。高級住宅街とはいっても日本とは桁が違います。
地価はここ10年ほどで急騰しており、その原因は何といってもハイテク・IT企業の台頭です。狭い地域に高給ビジネスマン人口が急増したことによって住宅費用の高騰がもたらされましたが、そのことによって住みにくくなった一部の人には先端IT企業等を恨むような声も上がっているようです。
欧米では当たり前のチップですが、サンフランシスコではなんと料金の20%程度を求められます。会計伝票にチップの金額(パーセンテージ)を選ぶ項目が設けられていますが、多くは18%か20%の選択肢しかありません。チップに慣れない私のような日本人には「チップをいくら払えばいいか」などと悩む必要がないので楽なシステムですが、消費税と合わせれば30%近くも商品価格から上乗せされることになるので、やはり「expensive」と感じてしまいます。物価が高い中で生活していくためには、従業員としてもこれくらいのチップが必要なのかもしれません。
飲食代とともにチップをカード払いで済ませながら、果たしてこのチップは「賃金」にあたるか、という問いが思わず頭の中に浮かんできます。どのように考えることができるでしょうか?
「賃金」とは、労働の対価として使用者から労働者に支払うものですので、客が従業員に対して支払うチップは賃金にあたらない、というのがチップにまつわる一般的な回答です。もっとも、現金で直接従業員にチップを渡さずにカード払い決済が採用されているサンフランシスコの飲食店の場合は、「チップ」の性質から導かれる原則的回答とは異なりえます。こうした飲食店の場合は、おそらく店側が一度チップとしてサービス料を客から受け取ったうえで、後日、勤務していた従業員に店側が定めた計算式によって所定の金額を分配しているものと思われます。そうすると、その分配される金額は「使用者が支払うもの」となりますので、従業員が基本給に上乗せされて受け取るサービス料相当額は賃金にあたる、という結論が導かれることになりそうです。日本ではあまり考える機会も少ないチップですが、このように個別事情ごとにどのような性質を持つかを考えてみるのも面白いですね。
サンフランシスコの文化で挙げないわけにはいかないのが、カストロストリートを中心とするLGBTコミュニティです。LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称です。日本では人口の8%程度がLGBTであるとも言われていますが、現地ガイドの話によるとサンフランシスコでは人口の約30%がLGBTだということです。LGBTの方は、多様性を表す6色のレインボーフラッグを自宅に掲げており、カストロ地区周辺では特に多くのレインボーフラッグを見ることができます。
実際にカストロストリートにあるカフェで食事をしましたが、周りはほとんどゲイの方ばかりでした。ここではLGBTをセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)とは感じさせず、多様性を当たり前のこととして受け止めることができます。
こうした開放的なLGBTコミュニティを肌で感じながら、ここでも日本の法規制の現状についても思いを巡らせずにいられません。2019年5月に成立したパワハラ防止関連法の付帯決議には、企業がSOGIハラ対策をとるべきことが盛り込まれました。SOGIハラとは、恋愛感情や性的関心が向かう先を示す性的指向(Sexual Orientation)と、自身が認識する性別を示す性自認(Gender Identity)の頭文字にハラスメントをつけた造語で、性的指向や性自認に関する差別的言動やいじめなどを指します。早ければ大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月にはSOGIハラを防ぐための措置を講じることが義務付けられるでしょう。具体的には就業規則の改定や、研修を通じてSOGIハラを防ぐための周知や啓発、相談窓口の設置や再発防止策の策定などが想定されます。
日本社会ではカミングアウトのハードルがサンフランシスコをはじめとした欧米と比べても高いのが実情ですが、日本でもLGBTを含めて多様な人材が働きやすい環境がより一層整備されるよう、私も企業への労務支援を通じて尽力していければと思います。
サンフランシスコでの移動はすべてUber(ウーバー)を利用しました。スマートフォンにダウンロードしたウーバーのアプリを使えば、いたるところで走っているウーバー車に乗りたいときにすぐに手軽に乗ることができます。乗車地点と目的地はアプリの中で入力できるため、英語が苦手な方でも運転手と会話を交わすことなく目的地までたどり着くことができます。
このウーバーですが、つい先日、サンフランシスコのあるカリフォルニア州で独立事業主の定義を厳しくする新法が成立したことで懸念が広がっています。ウーバーのサービスは、スマートフォンのアプリを介して一般の運転手と乗客をマッチングするもので、運転手は独立事業主という扱いとなっています。カリフォルニア州の新法は、この運転手を従業員(労働者)として扱うことを迫るものであり、企業は最低賃金の保証など費用負担が増大するおそれが出てきました。ウーバー側は、成立した新法のもとでも運転手は独立した事業主だと信じていると主張していますが、新法発効後は法解釈を巡って法廷闘争に持ち込まれる可能性もあり、目が離せない注目トピックスといえそうです。
働き方改革や副業解禁などが進む日本でも、ウーバー運転手のようなネットで単発の仕事を請け負うギグエコノミーに関する法規制議論は今後活発化してくるでしょう。ウーバーに関連するカリフォルニア州新法やギグエコノミーの問題については、また別稿で詳しく論考する機会を設けられればと思います。
サンフランシスコ市内にある連邦高等裁判所James R. Browning U.S. Courthouseにて裁判の傍聴をしました。4件の裁判を傍聴しましたが、どの事件も弁護士が白熱した弁論を展開しており、非常に見ごたえのあるものです。米国ではほとんどの裁判が和解で終結するとのことで、1審の連邦地裁で判決まで持ち込まれること自体がまれのようです。そのため、連邦高裁で弁論を行うということは弁護士にとってもめったにない機会であり、米国弁護士にとっても力が入る特別な法廷と言えるでしょう。
弁護士の法廷弁論の様子は始終モニターでも映し出されていたのですが、驚いたのはその撮影したVTRがすぐさまYouTubeにアップされるということです。米国ではまさに本当の「公開」裁判が実現されています。裁判所がYouTubeによって裁判を公開していることは、手続きの透明性が一層高まる点でも望ましく、IT化が進む米国ならではの先端的取組みのように感じます。
日本では、最近ようやく裁判のIT化に向けた議論が本格化してきたようです。民事裁判のIT化を進めている最高裁では、書面や証拠のオンラインでの提出を早ければ2021年度中にも実施する方針を打ち出しています。現在では数百ページに及ぶ書面や書証であっても、FAX、郵送又は持参して提出しなければならないため実に膨大なコピーが必要ですが、オンライン化が実現すれば利便性は大きく高まるでしょう。
サンフランシスコでは、MARSHALL・SUZUKI LAW GROUP,LLP(マーシャル・鈴木総合法律グループ)を訪問し、代表弁護士である鈴木淳司弁護士との交流を深めました。
鈴木弁護士は、高校生の頃渡米し、サンフランシスコの法律事務所で数年勤めたのち独立されて今の法律事務所を設立されています。日系企業からの依頼を多く受けており、有名大企業の仕事も多数扱うなど、サンフランシスコでも随一の弁護士です。米国西海岸への進出をご検討されている方には、マーシャル・鈴木総合法律グループをご紹介させていただきます。
今回はもう一つ、Morgan Lewis法律事務所を訪問し、同事務所のパートナー弁護士であるナンシー山口弁護士とも関係を築きました。
同法律事務所は、香港、上海、シンガポール、東京などのアジア地域や、ロンドン、パリ、ブリュッセルなどのヨーロッパを含めた世界に30拠点を構えるグローパルファームであり、弁護士数も合計1900人を超える巨大事務所です。ナンシー弁護士は国際的なM&Aや金融、IT、ソフトウエア産業などのテクノロジー分野で多くの実績を有する弁護士ですので、海外でのM&A等をご検討される場合はナンシー弁護士をご紹介させていただきます。
サンフランシスコは、伝統的な制度に反発し、縛られた社会生活を否定したヒッピー文化発祥の地でもあります。新しいことに柔軟で前向きな精神が、開放的でリベラルな文化を生み、またITの先端をいく革新的なビジネスを生む土壌となっているのかもしれません。新しいことに挑戦する際には、その空気を吸い気持ちを奮い立たせる意味でも、一度サンフランシスコを訪れてはいかがでしょうか。
岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。
2019.11.05 | コラム
Copyright (C) 虎ノ門法律経済事務所. 2007- 2024 All rights reserved.