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コラム

新型コロナウイルスの流行と企業の危機対応

ここがポイント‐この記事から学べること

1.新型コロナウイルスの流行と企業の危機対応

新型コロナウイルスの流行と企業の危機対応
中国武漢市に端を発した新型コロナウイルスは今や50か国を超える国・地域で感染が拡大され、各国で厳戒態勢が敷かれるなど社会に大きな混乱を引き起こしています。政府の危機管理体制の不備や後手後手の対応、決断力の欠如など政治に対する批判は山のようにありますが、企業は自らの判断と危機管理においてこの困難を克服していなかければなりません。企業の皆様には、社員の健康を守りながら、この非常事態を何とか乗り切っていただくことを願っております。

2.休業と雇用調整助成金の活用

休業と休業手当

イベントの中止や観光の自粛などによってホテルや飲食店等を中心に客足の大幅な減少が起き、人余りや開店すること自体困難な状況にある店舗もあることと思います。また、政府による全国の小中学校・高校などへの一斉休校要請を受け、業務自体完全に停止せざるを得ない関連企業もあることと思います。こうした経営上の理由により社員を休業(労働契約上労働義務ある時間について労働をさせないこと)させる場合には、使用者は、休業期間中、労働者の最低生活の保障のため、当該労働者にその平均賃金の6割以上の手当を支払う必要があります(労働基準法26条)。
もっとも、平均賃金の6割とはいえ企業にとって大きな負担であることは違いありません。こうしたときに活用を検討したい助成金に「雇用調整助成金」があります。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されるものです。この助成金では、企業が従業員に支払った休業手当負担額等の3分の2の金額を受給することができます(対象労働者一人あたり8335円が上限。)。

雇用調整助成金の受給要件

この助成金を受給するための主な要件(概要)は次のとおりです。

1.雇用保険の適用事業主であること
2.売上高又は生産量などの事業活動を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること
3.雇用保険被保険者数及び受け入れている派遣労働者数による雇用量を示す指標について、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上増加していないこと
4.実施する雇用調整が一定の基準を満たすものであること
【休業の場合】
労使間の協定により、所定労働日の全一日にわたって実施されるものであること(事業所の従業員全員について一斉に1時間以上実施されるものであっても可)
5.過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して一年を超えていること

新型コロナウイルスの影響を踏まえた特例措置

新型コロナウイルスによる影響を踏まえ、厚生労働省から雇用調整助成金について特例措置を講じることが発表されています。

【特例の対象となる事業主】
日本・中国間の人の往来の急減により影響を受ける事業主であって、中国(人)関係の売上高や客数、件数が全売上高等の一定割合(10%)以上である事業主

【対象となる事業主の例】
・中国人観光客の宿泊が無くなった旅館・ホテル
・中国からのツアーがキャンセルとなった観光バス会社等
・中国向けツアーの取扱いができなくなった旅行会社

休業する場合は積極的に活用を

企業がやむを得ず休業の判断を行う場合には、
雇用調整助成金の活用を是非ご検討いただければと思います。
受給申請は、申請窓口である都道府県労働局やハローワークにお問い合わせのうえお手続きください。
また、ご自身で申請されることが難しい場合には、当事務所にご相談いただくことも可能です。

3.非常時における働き方の工夫と労務対応の準備

従業員への感染防止や休校措置への対応のため、「働き方」を柔軟にするということも考えられます。
例えば、フレックスタイム制を敷いている場合には一時的にコアタイムを免除することや、有給休暇取得の奨励、有給を使い切っている場合には無休の特別休暇の付与等があります。感染拡大を防ぐため、営業時間や窓口の縮小など、社会全体で協調した自粛行動も当面の間は検討しても良いようにも思います。より大きなリスクが現実化する前に、各自が知恵を絞って危機対応を行い、この困難を乗り越えていければと切に願っています。
もっとも、マスクにとどまらず、トイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占め行動などの異常さを見ると、ウイルスもさることながら、本当に怖いのは結局「人」かもしれないとも思えてきます。企業としては、非常時はもちろん、平時から「人」に関わる労務について真剣に考え、様々な問題に対応できる体制を整えておいてほしいと思います。
弁護士 古山雅則

この記事を書いた執筆者:弁護士 古山雅則

岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。

2020.03.03 | コラム

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