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コラム

アジアのラストフロンティア・ミャンマー

ここがポイント‐この記事から学べること

1.今、ミャンマーが熱い

ミャンマー(ミャンマー連邦共和国)
ミャンマーは東南アジアのインドシナ半島の西に位置する国で、周りは中国、インド、タイなどの国々と国境を接しています。民主化運動の象徴であり現在は国家顧問を務めるアウンサンスーチーさんが日本では有名だと思いますが、現地では、その父親であり、「ビルマ建国の父」と呼ばれるアウンサン将軍の存在が今なお格別のように感じました。
ミャンマーは人口約5000万人、そのうち約7割がビルマ族ですが、130を超える民族が居住する多民族国家です。国民の約85%が仏教徒で、各地に多数の寺院が建てられています。その中でも、ミャンマー最大の聖地と言われるシュエダゴォン・パゴダなどは外せない観光名所ではないでしょうか。
ミャンマーに世界が押し寄せる

2011年に軍政を脱してテインセイン・大統領が民主化改革を進めて以降、ミャンマーはアジアのラストフロンティアと呼ばれるまで一気に経済が成長していきます。ミャンマー最大の都市であるヤンゴンには高級ホテルが林立し、高層ビルには名だたる大企業がオフィスを構えています。現地に長く駐在している日系企業の方の話を聞くと、数年前まで汚く不便だった街がどんどん快適で済みやすい都市へと変貌しているとのことでした。
少し郊外に行けば、電気も水道もないような環境が広がっています。道路は整備されておらず、電車ももちろん走っていません。大都市の一部を除き、社会インフラがまったく整っていないということは、さらなる発展に向けた投資価値が高いことを意味します。ミャンマーはまだまだ貧しい国ですが、「上に登っていくしかない」国でもあります。少なくとも今後数十年は、飛躍的なスピードで成長していくことを疑う人はいないでしょう。人口が減少し、老後不安が蔓延しているような成熟しきった日本と異なり、ミャンマーはまさにこれから上へ上へと昇っていく国だという点で、遥かに大きな「伸びしろ」を持っています。
そして、ミャンマーの魅力を高めているのは、何と言っても地理的なアドバンテージではないかと思います。ミャンマーの北には中国があり、西にはインドがあります。この2国を合わせるだけで、20億人を超えるマーケットが広がっています。東のASEAN諸国を合わせれば、世界の約4割にも達する30億人の市場の中心に位置しています。しかもミャンマーはインド洋に面しているうえ、ミャンマーの南に延びる半島部分に運河が出来上がれば、シンガポールを超えるアジアと中東・ヨーロッパを結ぶ海運の大拠点となる可能性をも秘めています。
このように、ミャンマーの経済は「上り専用」であるうえに、政治的にも経済的にも無視できない重要な地政学上の位置を占めていることから、世界中から開発援助がなだれ込み、企業の投資も加速しているといえるのではないかと思います。

2.日本企業の進出を後押しするティラワ経済特区

ティラワ経済特区

世界各国の企業は、それぞれのやり方でミャンマーへの進出を行っていますが、日本はヤンゴン市街地から南東約20キロに位置するティラワに経済特区を有しています。丸紅、三菱商事、住友商事、3メガバンクや日本政府等の出資により設立されたMJTD(Myanmar Japan Thilawa Development Ltd) は、工場団地の開発・販売・維持管理等の事業を担っており、特区内への企業誘致や進出支援も行っています。
約600haにも及ぶ広大な土地では、まだ未開発ゾーンも多いですが、2019年2月1日時点では103社が進出決定済みであり、そのうち53社が日本企業であるとのことでした。

特区への工場進出の魅力

ティラワ経済特区では、Myanmar Special Economic Zone Law(SEZ法)が適用され、ティラワ経済特区を運営するMJTDを通して、投資ライセンス、環境許認可、建設許認可、税務、VISA,通関、労務などのワンストップサービスを受けることができます。また、税制優遇も、7年間の全額免除と5年間の半額免除など充実しています。
ワーカーの月間賃金は200ドルに満たないこともあり、海外に工場を持つことをお考えの企業は、ティラワ経済特区の利用も検討に値するのではないでしょうか。

3.ミャンマー司法制度の現状と展望

ミャンマーの弁護士会との会食

ヤンゴンでは、ミャンマーの弁護士会の一つであるILAM(Independent Lawyer’s Association of Myanmar)の会員弁護士と意見交換をしました。若手弁護士には国際標準の研修を検討しているとのことで、弁護士のレベルアップを目指している様子がうかがえました。ミャンマーでは、大学の法学部を卒業して研修を受ければ誰でも弁護士になれるため、弁護士と言っても能力はピンキリであり、その実力アップが課題のようです。もっとも、そもそも誰でもなれるという制度設計のため、ミャンマーの弁護士の地位は低く、優秀な学生は別の職業を目指すところにそもそもの問題があるようにも思えます。
ミャンマーの弁護士には法服のようなものがあり、凛とした姿には感銘を覚えました。

ミャンマー弁護士の課題

会食中にも話題になりましたが、ミャンマーでは弁護士自治が不十分であることへの懸念があります。日本では弁護士会による弁護士自治が確立されており、国家から独立して職務を全うすることができますが、ミャンマーでは弁護士ライセンスの発行権限や懲戒権限を最高裁判所が握っているため、弁護士は「お上に逆らわない」という姿勢にならざるを得ないようです。なお、オフィシャル的にはもちろん否定されていますが(汚職として摘発される人もいますが)、裁判でも賄賂がものをいうことがあるとの話もちらほら聞こえてきます。
ヤンゴン市街からティラワ経済特区までは車で約1時間の道のりですが、その途中で交通事故の現場に出くわしました。ミャンマーでは賠償保険の普及が全く進んでいないため、事故にあっても適正な金額の賠償を受けられる見込みはほとんどありません。また、事故の際に、警察を呼ぶということもしないとのことでした。警察を呼ぶと警察に渡す賄賂の方が高くなるため、その場で相手方と適当に話をつけて終わらせることが多いようです。こうした交通事故分野一つをとってみても、法整備や保険の普及等、まだまだやるべきことは多い様子がうかがえます。

法務長官府・最高裁判所への訪問

ミャンマーの首都ネピドーにある法務長官府と最高裁判所を訪問しました。それぞれ、法務長官と最高裁長官にご対応いただき、弁護士会制度等に関する意見交換をすることができました。

ネピドーでのゴルフ

余談ですが、ミャンマーでお会いしたJICA専門家の方と話をした際に、「せっかくだから」と急遽ゴルフのセッティングをしていただきました。予定が詰まっていたため、日の出とともにプレーをはじめ、ハーフを回って法務長官府を訪問するというハードなスケジュールになりましたが、会長島耕作がプレーしたゴルフ場だということで、島耕作気分で随分楽しめました。ネピドーでは遊ぶ場所がないため、現地駐在員の方はゴルフ漬けの方が多いようです。ゴルフ好きの方は是非ミャンマーへの進出を前向きに考えていただければと思います。

終わりに

私は今回はじめてミャンマーへ行きましたが、ビジネスとしても、また生活面で見ても、非常に魅力のある国だと心から思いました。もちろん、視察旅行という建前から「良いところ」だけを見てきたのかもしれませんが、駐在している日本人の多くの方から「もうほかの国にはいけない」と言わせるほど、現地での生活に満足されている様子は非常に印象的でした。
行かれたことがない方は、是非一度、観光もかねて訪問されてはいかがでしょうか。

弁護士 古山雅則

この記事を書いた執筆者:弁護士 古山雅則

岐阜県出身。中央大学法科大学院卒業。経営者側に立った経営労務に特化し、現在扱う業務のほとんどが労働法分野を中心とした企業に対する法律顧問業務で占められている。分野を経営労務と中小企業法務に絞り、業務を集中特化することで培われたノウハウ・経験知に基づく法務の力で多くの企業の皆様の成長・発展に寄与する。

2019.08.27 | コラム

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